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「うつ病も不安障害も同じ薬で治療するなんておかしい?」

結論:うつ病と不安障害は、現時点では、同じ薬(SSRI等)で治療するのは標準的であり、おかしくありません。

・うつ病や不安障害(パニック障害 強迫性障害 社会不安障害など)の治療では、SSRI(セロトニン選択性再取り込み阻害薬)という薬が使われます。シナプス間隙のセロトニン量を増やす薬です。

・「うつ病も不安障害も同じ薬なんて変だ、原因が違えば違う薬があるはずじゃないか」というご指摘を頂きます。 実は、心療内科 精神科の病気は症状で定義されているため、投与して1週〜数ヶ月で症状が良くなれば、効果がある薬とされています。

・SSRIは、うつ病や不安障害に対して、症状やQOL(生活の質)を改善させることのできるお薬です。うつと不安は似ています。セロトニンが何らかの関与をしていることは間違いないのでしょう。

愛知県豊田市の心療内科 豊田土橋こころのクリニック 2016年8月開院

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<ここからは、専門家や内容に詳しい人向けです>
・このことを 星和書店/精神科臨床サービス第12巻01号 2012年1月号に書きました。

・「●薬で「治る」とはどういうことか?――脳科学への期待―― DSMによる精神障害の診断が一般化しているが,DSMにおける診断分類は,病因・病態ではなく,症状と社会的機能に基づく操作的診断基準によって下される。これまでの精神科治療薬のうちの大半は,病因・病態ではなく,精神症状を改善するという観点で開発され使用されている。現在,症状によって分けられた精神障害(統合失調症,双極性障害,大うつ病性障害など)の病因・病態解明にむけた脳科学は進みつつあり,今後,これらの知見をもとにして,精神障害の病因・病態・症候を加味した診断および薬物治療を含む治療体系が構築されることが期待されている。本論では,現在における精神医学・脳科学の成果について概説する。」

・各国で診断基準が異なると、有病率や治療効果等を比較したり、まとめることが困難です。DSMⅢ頃から、異なる国や地域の間で診断が同じになる基準(評価者間信頼性の高い診断基準)を採用しており、世界で同じ診断になるようになったため、研究の再現性が高まりました。評価者間信頼性は高いのですが、診断の妥当性の問題が生じます。つまり、病因病態が1つではない可能性のあるグループが1まとめにされているのです。

・現在、共通の病因病態と共通でない病因病態のグループを分けていくという取り組みが数十年かけて行われています。 このような診断基準の中で、「薬で治るとはどういうことか?」を述べようとすれば、薬で治療した時に症状改善と同時に起きている遺伝子 RNA たんぱく質の発現変化、血流や電気活動の変化、脳の機能変化等について述べることになるのです。それが病因病態にどのようなカスケードで関連しているかはわかっていませんし、そもそも病因病態が複数ある可能性も高いのです。

・病因病態は、ゲノム解析(common variantであればGWAS、rare variantであればexome、WGSなど)により、現在の診断基準の中でどれくらい多様であるかが分かり始めていると思います。見つかったRare variantに関係する遺伝子やたんぱく質のネットワーク解析や、治療反応性に関するゲノム解析によって、病因病態が細分化され、より病態に沿った治療薬が開発されていくことを期待しています。

・一方、遺伝子のネットワーク解析では、既に機能や相互作用がわかっている遺伝子群しか調べられないという欠点もあり、生化学や生理学などの基礎的な知識の蓄積が今後進むことでネットワーク解析も発展していくものと思われます。

・ゲノム解析は、遺伝子型と表現系の関連を調べることができます。表現型は、脳構造、発症の有無、心理症状、治療反応性、副作用など何でも取れるので、統計方法はややこしくなることはありますが、非常にrobustで新薬開発にも有用な解析手法です。

・ゲノム創薬は、難病やパーソナル医療への治療の鍵となりますし、高齢化の進む日本においては、国際パテントによって、国の収益にも資すると思います。

・結論:議論が回り道しましたが、うつ病と不安障害は、現時点では、同じ薬(SSRI等)で治療するのはセオリーであり、標準的です。

愛知県豊田市の心療内科 豊田土橋こころのクリニック 2016年8月開院

2016.05.04 | うつ病のすべての記事,院長の独り言,こころの症状や病気,その他の不安症,ヒトの遺伝と多様性に関して,不安障害