1. 情報の非対称性

自由な市場でも、すべての市場参加者が同じ情報を持っているわけではありません。情報が不完全であったり、特定の投資家やファンドが情報を早期に得ることができたりする場合、株価は必ずしもフェアバリューに近づきません。この情報の非対称性が、株式市場でのミスプライシングを引き起こす原因となります。

• インサイダー取引や、企業の財務データが一般に公開される前に、機関投資家が先に取引を行うといったケースが存在します。このような情報の不均等な配布が市場の効率性を損ねる原因となり、アクティブファンドが優位に立つことを可能にします。

2. 投資家の心理や行動の非合理性

市場参加者は必ずしも合理的に行動するわけではなく、行動経済学の視点から見ると、投資家の心理が株価に大きな影響を与えることが分かっています。恐怖や欲望、群衆心理などが株価に過剰な影響を与える場合、株価はフェアバリューから乖離し、ミスプライシングが発生します。

• バブルやクラッシュなど、投資家の感情や群衆行動が支配的になると、市場は非効率的になり、株価が実際の企業価値を反映しない状態が続くことがあります。アクティブファンドはこのような市場の歪みを利用して利益を上げることができます。

3. 市場の流動性の問題

市場が非効率的である理由の一つに、流動性の欠如があります。特に、時価総額が小さく流動性が低い企業や新興市場では、株価が容易に誤評価されやすいです。

• 大量の取引がない場合、価格は少数の売買に過剰に反応してしまい、株価が理論的なフェアバリューから乖離することがあります。このような状況では、アクティブファンドが適切な価格評価を行い、利益を上げるチャンスを得ることができます。

4. 機関投資家やヘッジファンドの存在

ヘッジファンドやアクティブファンドは、リスクを取ることをいとわず、価格の誤評価を利用して利益を上げることができます。これらのファンドは、株式の本質的な価値を理解し、市場の非効率性を突くことを専門にしています。

• 一方、インデックスファンドは市場全体のパフォーマンスに連動することを目的としており、市場が効率的であることを前提にしていますが、市場の非効率性やミスプライシングを見逃してしまうことがあります。

5. 制度的な歪み

自由な市場が期待される中でも、規制や政府の介入によって市場が歪むことがあります。例えば、中央銀行の金融政策が過度に緩和的である場合、金利の低さが資産バブルを生み出すことがあります。これにより、資本の流れが歪み、株式市場が過剰に膨張することがあります。

• 金融緩和政策が長期間続くと、投資家が低金利を避けてリスクの高い資産に資金を流し込むことがあり、その結果としてバブルが発生し、株価が実際の企業価値から大きく乖離することになります。

6. 市場の反応の遅れ

市場は必ずしも即座にすべての情報を反映するわけではなく、特に新しい情報や予測不可能な出来事に対する市場の反応は遅れることがあります。このため、株価が短期間で実際の価値から乖離することがあり、そのタイムラグを利用することがアクティブファンドの得意分野です。

• 例えば、決算発表や経済指標など、予測外の情報が市場に登場した際に、アクティブファンドはその情報を迅速に評価し、他の投資家より先に取引を行うことができます。

結論

自由な資本主義が理想的な市場を提供しているという前提は、現実の市場においては多くの歪みや非効率性が存在するため、必ずしも成り立ちません。これらの歪みは、情報の非対称性、投資家の心理、流動性の問題、制度的な歪み、そして市場の反応の遅れなど、さまざまな要因から生じます。そのため、アクティブファンドが市場のミスプライシングを利用して利益を上げる素地が残るのです。

これが、自由な資本主義が完全に効率的でない理由であり、またアクティブファンドが勝つ可能性を持っている理由でもあります。

＜院長＞完全に自由な資本主義の構築には、壁がありますね。アクティブファンドがあるおかげで、ミスプライシングが是正されるという側面があります。インデックスファンドの価格の適正さは、アクティブファンドにより支えられている面も大きいと思います。